セレンディピティの逃亡劇 [5]








いきなり耳元で悲鳴が聞こえた。混乱状態の頭を振って横を見ればグレンジャーが真っ青な顔をして僕を見ていた。



「グレンジャー、いきなり人の耳元で…」

「………あ…あ…」

「…おい、大丈夫か?」



どうやらグレンジャーも混乱しているらしく、視点が定まっていない。一体どうしたのか。試しに肩を揺すって声をかけると彼女ははっとして僕を見た。



「マルフォイ…わ、私…私…なんて…夢…」



小さい声で言っていたせいでよく聞こえなく、彼女の口元に自分の耳を近づけた。夢?夢を見て叫んだのか…?



「夢…?」



グレンジャーが首を縦に思いっきり振って返事をした。





「……私、後悔なんてしてないけど…あんな夢…」









グレンジャーの話によると、ポッター達が自分の前から消えていく夢だったという。……。心の底ではもしかして、僕についてきた事を後悔してるんじゃないかと思った。そんな夢を見るという事は考えられない事でもないからだ。



「でも、平気よ。ただの夢だもの…」



最後にグレンジャーは軽く笑ってそう言った。



とりあえずそれは夢だという事で片付けて時間もちょうどいい具合だったので僕達は列車から降りる事にした。グレンジャーはボロ列車からやっと出られた!と騒ぎいつも通りに戻っていた。

マグルの世界に来たのは実際の所、初めてだ。あまり向こうと変わらないが何処となく違う感じがする。朝は通勤ラッシュが起こるとグレンジャーが前、言ってたっけ。それにしてもすごい混んでいる。







これから向かうのはここから一番近い空港。そこでハグリットに手紙を書く事になっているがはっきり言えば別に書かなくてもいいと思う。だけどグレンジャーは書く気満々らしく口を出すのは止めておいた。











空港まではあっという間についた。まさか午前中のうちに空港につけるとは思っていなかったので驚きだったがなるべく早くイギリスから出たいと僕もグレンジャーも思っていた。そろそろ、父上の耳にも僕がホグワーツから居なくなったという連絡がいっているはずだ。もちろん、グレンジャーの親にも。父上の事だから僕とグレンジャーの仲はきっと何となく知っていたと思う。何も言って来なかったのは怪しかったが…こういう状況になれば絶対に追っ手か何かを仕掛けてくるはずだ。そんなものに構っている暇はない。



「マルフォイ、チケット持ってる?」

「あるよ」



僕はグレンジャーにロシア行きのチケットを2枚渡した。いつまで逃げ切れるか分からないが出来るところまで行ってやる。そんな気持ちが前よりも強くなっている気がする。



「おめぇさん達」



いきなり後ろから声がした。何だか聞いた事ある声だ。しかもこの口調…。



「…」

「え!?ハグリット!?何でここに…」



ハグリットが立っていた。












※当初予定ではマイナーのハグハーだったんですよ(汗)